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2018年10月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像10月

医のゆるす一合の酒温めむ

右手より左手冷ゆる理由あり

うつくしき山の容(かたち)の秋思かな

粧へる山ふところの荼毘の径

ねもごろに紅を注しゐる竜田姫

わが推理迷宮に入る夜長かな

長き夜の猫のお相手致しけり

秋蝶の何かせはしき花背かな

のゝ宮に恋の絵馬殖ゆ竹の春

乗換へてまだ蹤いて来る草虱

愛憎のあはひを揺れて曼珠沙華

猫抱きて猫につぶやく夜寒かな

脳のこと考ふる脳冷ゆるなり

身のうちの鬼を宥むる温め酒

指にまた包帯をして夜学生

時計とふ非情の機械夜業人

かげぼふしより歩き出す秋の暮

霧の夜の掌の中の手の繊かりし

何もたらすや霧のなか霧うごき

再会を誓ふシスコの夜霧かな

古民家の秋の昼寝によき柱

キヲスクに買ふ握り飯野菊晴

全身をしづかに虫を聴いてゐる

秋燈や自問自答の夜も更けぬ

一塵の如く吹かれて天高し

秋雲やフーテンの寅永遠なり

ひとづまと訪ぬる嵯峨の薄紅葉

菊月をひと美しく闊歩せり

鳥は翔び人は歩みて菊日和

仏壇の塵を許さず菊かをる

深々と菊の香を吸ふ訣れかな

ふりむけばすでにたそかれ柳散る

柳散るぎをん新橋巽橋

つれづれの手のひら白き秋思かな

爽やかに何も持たざる手がふたつ

おもひだす女の体温火恋し

日の本の色となりたる熟柿かな

柿干して御歳百になりたまふ

秋燈や自問自答の夜も更けぬ

明朝体うるはし灯火親しめり

宵闇の窓辺にをれば二胡噎ぶ

百獣の王の瞑想秋深し

二階には二階の風や雁の声

髪切ればこころも変る鵙日和

鉛筆の芯をするどく鵙日和

キネマ出て釣瓶落しにまぎれたる

釣瓶落し宇治の早瀬に見了んぬ

たれかれのそびらがとほし秋の暮

傷みたる木馬もまはる秋夕焼

なんとなくイエスに似たる案山子かな

后陵秋のてふてふ頻り舞ひ

初鴨や洛北の水青まさる

松手入せし香あふれて妙心寺

秋深き音をあつめて地獄耳

城址に佇てば聞こゆる秋のこゑ

真顔とは寂しきかほよ秋の水

風立てば風に身構ふ蟷螂かな

祇王寺の滝口寺の薄もみぢ

しあはせを装ふ秋果盛りにけり

弥次郎兵衛静止して水澄みにけり

あをあをと蟷螂飢ゑてゐたりけり

三叉路は別るゝために秋の蝶

駆けまはる犬にも笑顔花野風

菊月や錦にそろふ旬のもの

うまさうな酸素を吸ひに星月夜

薄目して猫の窺ふ夜長かな

半眼に猫の見透かす長き夜

天体となれずに廻る木の実独楽

時代祭御維新の音に天高し

銀河より漁火一つ帰り来る

濁酒酌むここは銀河の番外地

つぶやけば消えてしまひぬ秋の虹

末枯や結びたる実は朱を尽くし

黄落の水の迅さとなりにけり

デッサンの線走らせて黄落季

玲瓏と霜降の空ありにけり

化野に蝶見てよりの秋思かな

化野やきのふのけふを秋時雨

神妙に猫のはんべる障子貼り

川の名も変りて水も末枯るゝ

読みさしに戯曲閉づれば露時雨

穂芒のあつむる風のやはらかし

桐一葉町川に落ち町を去り

秋惜むみたらし茶屋の外床机

惜秋や骨董街をたもとほり

銀閣とわたしと色なき風の中

鳴き砂を鳴かせて秋を惜しみけり

門灯の守宮と秋を惜しみけり

惜秋や塔より塔の影長く

鳥渡る宙に起伏のある如く

冷まじや紙の葬花の紙の音

ひとゝせの短さ夜の長さかな


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