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2019年3月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像3月

天平の色となりゆくはるぬかな

春宵の家路をいそぐ理由なし

料峭の候とひとひら喪の葉書

料峭に架かりて長き渡月橋

うらうらと茶碗は買はで茶わん坂

遠浅の海とほあさの春の空

三月の空を去るひと来たる人

京雛や過ぎにし御世のうるはしく

鉄棒は嫌ひのままに卒業す

鉛筆を噛む癖とともに進学す

酒見世の意外な混みや菜種梅雨

恋をはり猫に猫撫で声もどる

赤き蟻黒き蟻出て交はらず

蛇穴を出て松島の松のうへ

蟻穴を出て信長の草履の上

大濁りして春告げぬ最上川

のゝ宮に恋の絵馬ふゆ竹の秋

とことはの父母の留守春落葉

引鶴や別るゝために邂ひしとも

どこからを晩年といふ鳥雲に

肉じやがの煮くづれてゐる目借時

水ぬるむ近江に富士のありにけり

しづかなる牛の反芻春の昼

虻が来る己が羽音の後ろより

春愁のかほ無限なる三面鏡

滾ちつつ一期の鮎を上らしむ

口開けて口の数だけ燕の子

大寺の屋根まで飛べて雀の子

岬にも四五戸住みなす初つばめ

かげろふや薄暮ゲームと云ひしころ

かへりみて蜷の道にも似たること

どの寺の鐘やおぼろの東山

北野より平野へ花をうかゞひに

てふてふや北緯三十八度線

春休み小鳥のやうに早起きし

ジャムを煮て学生妻の春休み

春休み風のなまへを蒐めけり

竹秋の門よりまゐる天龍寺

幕の内弁当に春闌けにけり

朧夜の身に九穴のありにけり

天井に龍の眼のあるおぼろかな

朧夜のそろそろ眠き十指かな

あぶり餅炙る煙もうららなり

春風やたまさかに買ふ時刻表

母子草母逝きてより目につきぬ

存分に歩きて春の夕焼かな

フラミンゴシンメトリーに水温む

飯を食ふかりそめの世に接木して

接木して人生のどの辺りなる

かげろふへ皆入りゆけり一人づつ

あをあをと潮満ちくる初桜

花冷のつながつて出るティシューかな

あをあをと花冷の空ありにけり

まれびとを待ち花冷の京都駅

老人の眼のすぐ潤む櫻かな

言霊の駆けぬけてゆくさくらかな

 


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